ちょっと間が空いてしまいました。
アルバム収録曲紹介、今日は７曲目のAmanda's Themeを紹介します。
【７、Amanda's Theme
】
こちらも実は劇中音楽のために書いた曲です。前回まで音楽劇「肉の海」の話をしましたが、こちらは2020年に上演されました別役実さん作、渡辺えりさん演出の舞台「消えなさいローラ」のために書き下ろしたものを、カルテット用に編曲して録音したものです。
「消えなさいローラ」という作品は別役実さんという不条理劇の大家が書いた非常に含蓄の深い作品で、これをえりさんがひとクセもふたクセもある演出を加えて、しかもそれを尾上松也さんと二人で演じるという、なんとも濃い作品であったなと思うのですが。
この作品はアメリカ人劇作家のテネシー・ウィリアムズが書いた「ガラスの動物園」という有名な戯曲の続編として書かれたものです。その中にアマンダという名前の主人公の母親が登場します。それが引き続き「消えなさいローラ」にも登場するわけですが、どちらの作品でもアメリカの古き良き時代を頑固なまでに引きずり、時代の移り変わりや現実を直視できない母親として描かれています。
どんなに複雑な問題を抱えて現実と乖離していようとも母親はそれを無視して古き良き時代のやり方を通そうとするのですが、そのため彼女はちょっと病的で影のある場違いな明るさを場面に振りまくことになります。そんな彼女の登場シーンのために書き下ろした曲です。
元々はバイオリンとデュオで演奏するために書きました。バイオリンで映えることを考えて割と跳躍の多いメロディを書いたのですが、それをテナーサックスの杉本匡教が素晴らしい表現力で歌ってくれています。彼の優しい音色でこの曲が何倍もよく聞こえます。感謝。
3分程度と短い仕上がりになりました。歌曲三曲が続いたあと、聴いている人の耳を再びインストに引き戻すための幕間の音楽的なイメージでこの曲順で配置しています。
次回は8曲目、９曲目を一緒に紹介したいと思います。
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川本悠自カルテット
2nd オリジナルアルバム「One Step at a Time」
以下のリンクから、各種サブスクリプションサービス、配信サービスで聞くことができます。
ぜひお手元のデバイスでお楽しみください。
ご存知、コロナ禍でミュージシャンは音楽活動が厳しく制限されました。そんな状況下で色々な音楽表現を模索しつつの制作作業でありましたが、不要不急と言われながらも、結局は自分のできることを諦めずに一つづつ進めていくしかないな、という思いから、一歩一歩進むという意味の「One Step at a Time」というアルバムタイトルとしています。
今作は、インストゥメンタル６曲に加え、女優・劇作家の渡辺えりさんの作詞による劇中歌(#5,#6)などを含むボーカル曲３曲を加えた全９曲収録。川本自身が日本でジャズミュージシャンとして活動していく中で考える日本人による日本のジャズの形の提示を目指した意欲作です。
<収録曲>
1. 白雲一片去悠々
2. Fall
3. 曇り火
4. Climber’s High
5. 星の降る夜(音楽劇・肉の海より)
6. なみだ(音楽劇・肉の海より)
7. Amanda’s Theme
8. 1964
9. 2020
作曲 川本悠自
作詞 Note73(#4)、渡辺えり(#5、#6)
Bass 川本悠自
Tenor Sax 杉本匡教
Piano 武藤勇樹
Drums 河村亮
Vocal 寝占友梨絵(#4、#5、#6)
