ここ数日の楽屋のお供でした。本日読了。
黙々と楽屋で読んでるもんだから、同室の相方、YUHKIさんにはさぞかし陰気なヤツだと思われてるに違いない。
「楊家将」というのは中国の代表的な歴史小説。中国では「三国志」や「水滸伝」と並んでポピュラーな作品なのだそうだけれど、日本では知名度は低い。もちろんワタシも知りませんでしたが、知人のススメで読んでみることに。時代は10世紀。大陸では北に遊牧民族の契丹族の「遼」、南に漢族「宋」という国があってにらみ合いを続けていた時代。日本では平安時代くらい。その時代に宋と遼の国境線付近に本拠地を構え、宋軍の最精鋭として常に最前線で戦い続けた「楊」という武人一族のお話。
大国の狭間で生き延びるために自らの軍事力を鍛え大陸最強と言われる軍を擁する楊一族、その軍事力は戦力として重宝される一方で警戒もされる。戦って勝利を重ねれば重ねるほど増すのは信頼でなく警戒であり、強くなればなるほど前面の敵だけでなく後方にも敵が増えて行く。野心を持たない武芸一辺倒の一族が魑魅魍魎跋扈する大国の政治の中で翻弄され切ない末路を辿る。
当時の「宋」という国は文治主義を掲げて軍事力よりも文官の力で国を治める方針の国で豊かな国なのだけれど、それだけに北方の遼の脅威に対する警戒心が薄い。武人たる楊一族はその文官たちの軍事に対する認識の薄さを嘆く。最終的に宋は首都近くまで侵攻される結果となり、楊一族は死力を尽くして防戦に当たるも、結果、遼に毎年賠償金を支払うことで講和し国境線を維持することになる。武の力でなく、金の力で平和を維持した。結果、史実として100年以上の平和な状態を保っている。その間に宋も遼も大いに栄え、全盛期を迎えることになる。
その講和が成った時、楊一族はその結果を受け入れつつも嘆く。戦いとは何か、平和とは何か、国とは何か。そして軍事力のあり方が時代とともに変化していくことを感じる。
おりしも安保法関連で国会が議論の真っ最中で、平和とは何かをずいぶんと考えさせられる内容でもありました。この時の宋の状況は今の日本の状況にも当てはまることが多いと思います。
平和を維持する力とは、何か。軍事力か。経済力か。はたまた新しい何か別の力か。
大事なのは、どの力を国の方針として選択することでしょう。今の国会もメディアも世論も、そういう根のところまで議論ができているとは思えない。根を有名無実化して話を進めたところで後に残るのは矛盾と混乱だけでしょう。根、つまり憲法9条について、議論を徹底して行うべきでしょう。
そんなことを考えながら「開演30分前ですー」の声でいそいそと衣装に着替えるこの数日間のワタシなのでした。
いや、本当はもっと、男のロマンと愛憎を小気味よく感じさせ、しかも泣ける話なんですけどね。キャラもいいし。電車の中で泣きそうになったりしてるのですけれど、ついね。そっちの方に。
はー明日から何読もう。