8月31日。
34年目の始まりで、夏の終わりの日。
大好きな画家、村上肥出夫の個展を見に銀座の兜屋画廊へ行き、その後、蜷川幸雄さん演出のシェイクスピアの舞台を見にさいたま芸術劇場へ。
この日、村上肥出夫の個展最終日。
村上肥出夫の絵は凄い。
そもそも絵、と呼んでよいのかよくわからないくらい立体的で、狂気を感じるほどに色彩豊か。
もともと夕雨子の店内に飾ってあった絵を見てビックリして、一気に魅入られてしまったのだけれど、夕雨子のすぐ近所にある兜屋画廊に縁のある画家という事を知って、個展があるたび、見に来るようにしている。
この兜屋画廊の社長さんが前日の夕雨子のライブを見に来ていただいてたこともあって、とちまりさんのCDが店内でかかっていた。たまたまそのCDを欲しいと画廊に問い合わせているお客さんがいて、それならば僕が、ということで連絡先を預かってとちまりさんに繋ぐことにした。
少し話をさせてもらったらば、最近色々と思う事が多く気分転換にこうして画廊へ来ているのだという。少しジャズボーカルもするというその方は、そういう時に絵や音楽に触れては気分をリフレッシュするのだという。
ここでこうしてお会いできたのも何かの縁ですね、と笑って話した。
その後、蜷川幸雄演出の舞台「トロイラスとクレシダ」を見るため、さいたま芸術劇場へ。
これは先日、たまたまこの劇場のロビーで演奏する機会があって、それが縁で招待していただいたもの。蜷川演出の舞台を見るのは初めて。そしてシェイクスピアの芝居を見るのも初めて。
内容はさすがの一言・・役者の質も演出も、台本も、全部良かったな。
台詞ひとつひとつの言葉のリズムの良さが印象的だった。シェイクスピアを訳す、ということで、きっとそういうところにずいぶん留意したに違いない。
実はこの舞台、男女の悲恋を描く物語でありながら、出演者全員が男。それでありながらキスシーンもラブシーンも惜しげなくあり、イケメン役者の全裸サービスシーンもあるという。笑
イケメン役者のケツを見てもさっぱり嬉しくないが、娘役の役者の色っぽさにはビックリした。
それで絡むシーンなんかやられると、いろんな意味でドキドキしてしまう。笑 こりゃやられたなと思う。お客さんは8割方女性だったけれど、みなさんこーゆーのを楽しんでおられるのだろうかなあー。
クレシダが女の性そのものだとすれば、
僕はトロイラスかディオメデスか。
* * *
兜屋画廊で会ったお客さんとも話したのだけれど、
たとえば心穏やかでない時は、心の神経が丸裸になって、とても敏感になる。人の感性に触れて何かを感じるチャンネルが心に現れやすくなる、そんな時に誰かの感性に触れて共感したり、これは違うと思ったり、いろんな事を思ったりすることで、迷い子の様になっている自分の心の動きを肯定して供養することが出来るんだろう。
たとえば穏やかな日常であっても、普段から感じるふとした想いの襞に直接触れる事ができるのは、やはり想いそのものでしかなく、それが芸術作品の価値、何かの表現が求められる理由なんだろう。
ずいぶんとまあ、文化的な一日だった。
いつも冗談みたいな「文化生活」の携帯ストラップが、この日ばかりはちょっと誇らしげに見えた。