今日のブログは、長くなる気がする。
人から聞いた話なので、きっと事実とは多分に異なるところもあると思う。
それでも大いに問題を感じたので、記す。
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今日、とある方面からある学バンが解散の危機にあるという話を聞いた。
わからない方、学バンとは学生ビックバンドの略、ですね。
大学生がサークル活動としてジャズのビックバンドをやっているところは結構多くて、毎年8月に開催される山野楽器主催のコンテスト、通称「ヤマノ」なるものに向けて、学生たちは日々努力するわけです。上位10校には賞も授与され、それなりのネームバリューもあるんです。
優秀ソリスト賞というのも存在して、プロミュージシャンでその受賞者は数多くおります。かくいう私も学生時代、京都大学というところのビックバンドに所属してヤマノにも出場経験がありますです。立派な学バン経験者です。
さてその学バン。
なぜ解散の危機かというと。
そのビックバンドはOBである作編曲家が毎年アレンジをそのバンドのために書いていて、アンサンブルの指導、必要なら個人レッスンまでケアしているとのことだった。もちろん有償で、である。その作編曲家の担当する楽器以外の先生も紹介し、各パートごとに細かくケアしているのだそう。
そのアレンジやレッスンが功を奏してかその学バンはコンテストでそれなりの成績を収める事も多くなった事もあり、そのバンドではそれがもう長年続いていて、それが慣例の様になっていたらしい。
まあ、学バンにプロがアレンジを書いたり指導をする、というのは、特に珍しい話でもないのですが。
最近、その作編曲家が学生の個人レッスンをするために先生として呼んで来たプロミュージシャンと、バンドのメンバーである学生が揉めて、修復不可能なくらいのトラブルになったそうだ。そのままではバンドの運営に差し障りが出るほどの。
そこでその作編曲家は、バンドに「そのメンバーを辞めさせるように」との指示を出したらしい。そのメンバーを辞めさせなければ、今後一切アレンジを書かないという条件を出して。
そのメンバーは、若いながらもかなりの腕前だそうで、バンドにとっては重要メンバーのひとりらしい。作編曲家の指示通りに彼を辞めさせるかどうかでバンドは二つに割れ、結局バンマス、コンマスを含む10人弱がバンドを去る事になり、バンドはほぼ解散状態に陥ったというのです。
その学バン、長年その作編曲家がアレンジを提供していることもあって、その作編曲家のアレンジが吹きたくて入ってきたという学生もいるほどらしい。その作編曲家の影響力はバンドの中でも直接的にも間接的にも大きいようです。
先にも書いた通り、プロが学バンに指導に行くのは珍しい話ではないけれど、
バンド運営はあくまで学生自身がするべきであって、いくら指導しているからといってメンバーなどの人事に外様のプロが口を挟むなんて、おかしいすぎる話です。
この話が事実であるなら、作編曲家はすこし行き過ぎた介入であると思います。
学生サークルである以上、バンドはあくまで学生自身のものだ。学生がやりたい事をやるためにやってるバンドなんだから。作編曲家のバンドではないでしょう。
今回の騒動でバンドを去ったメンバーは、そのような状況に嫌気がさしていたという事らしい。
学生にレッスンする事自体には問題あるとは思わないけれど、
仕事ととらえて行き過ぎる介入をすると学生の自主性を奪って行く事につながると思うんです。
自主性と、音楽を探求することに対してのハングリーさが学生に育たないんですね。
学生にそれらが育たないとどうなるかというと、まあロクなミュージシャンは育たないだろうし、ジャズリスナーであり続ける率も下がるだろうし、もちろんライブに来るお客さんも増えない。
ミュージシャンが目先の仕事にとらわれて、自分で自分のクビを絞めてるようなもんです。
例えば、僕が学バンをやっていた時は、誰も指導してくれるプロなんかいなくて、やりたい曲の譜面もないからアレンジも全部自分たちでやってた。アンサンブルもどうしたらよくなるかみんなで必死に考えて、いろんなCD聞いたし、とりあえずなんかの情報が欲しくてライブを見に行ったり、そこでプロを捕まえてアドバイスもらったりしてた。
そこにはちょっとしたハングリ−精神があったと思うんですよ。だから卒業後も楽器を続けたり、音楽を聞き続けたりしてる人も多いわけです。
でもそこに先の作編曲家みたいな指導する人がいて、アレンジのことやアンサンブルの事、はては楽器のテクニックのレッスンなんかまで手取り足取りやってくれたとすると、自分たちでなんとかしようっていう気、なくなりますよね。音楽の好き度が低いまんまで終わってしまう気がするんです。
最近、ついったなんかで、音大の学生たちが先生のライブを見に来ないのはなんでだというつぶやきを見かけますけど、少子化の影響か、不景気の影響か、少ない生徒に手取り足取りやりすぎなのかもしれないですよね。なんでも与えらる状況であれば、自分で何かを探しに行こうという気がなくなりますよ。だって、学校に行けば全部あるんだもの。明日学校で先生が教えてくれるんだから、わざわざ少ないお小遣いからお金払ってライブハウスにまで見に行こうとはしないでしょ。
学バンだと、音楽を専門に学んでいるわけではないからまだ深刻味は薄いけど、学校はちょと皮肉な状況でもあると思います。
ちょっと話がズレました。
もちろん学バンに指導しにいってるプロが全員、学生をカモだと思ってやってるわけではもちろんないし、ほとんどの方が良心的にやっているのだと思いますから、その全部を批判するわけじゃないです。もちろん。でも過度に介入しすぎると、学生の自主性を奪いかねない。
というか、あんまり親切にしすぎると、ヤツらライブに来てくれなくなりますよ。
逆に困るの僕らですよ。それが言いたい。笑
不景気で、それだけ僕らミュージシャンも追いつめられているという事なのかもしれないけど。
学生を食い物にしていいのか。